32条協議とは?開発許可前の必須ステップを解説

開発許可の申請をする前には、必ず32条協議を経なければなりません。
32条協議という名称だけなら聞いたことがある方も多いかと思います。
しかし、具体的にどのようなことをしなければならないのでしょうか?
今回は、32条協議の目的と概要について解説します。

32条協議の目的

都市計画法では、開発許可申請をする前に公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならないと規定されています。

(公共施設の管理者の同意等)

第三十二条 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。
2 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。
3 前二項に規定する公共施設の管理者又は公共施設を管理することとなる者は、公共施設の適切な管理を確保する観点から、前二項の協議を行うものとする。

根拠法令:都市計画法第32条

この協議のことを一般的に32条協議と呼称しています。
簡単に言うと、開発許可申請をする前の事前協議のことです。
ちなみに32条協議と開発事前協議手続は全く別の協議です。開発事前協議手続は、事前協議の前の手続です。要するに、会議をするための会議といったところです。
なお、自治体によっては、開発事前協議手続がなく32条協議から始まる場合もあります。事前に確認するようにしましょう。
当然ですが、32条協議は法律で明記されている手続きなので、全ての自治体で例外なく必要です。

公共施設とその管理者

公共施設とは、道路、水路、上水道、下水道、消防施設等のインフラ施設のことを指します。
そのため、ほとんどの管理者は市役所内の各所轄部署になります。
また、開発予定地が埋蔵文化財包蔵地である場合は埋蔵文化財包蔵地に関する協議も必要となります。
道路に関しては、国道や県道等、国や県が管理している道路もあります。そのような道路に接している場合は、国道や県道を管理している管理事務所等と32条協議が必要です。
必要な書類を各管理者に個別に提出し、個別に同意書を取得しなければなりません。非常に根気のいる作業です。

32条協議に必要な書類

32条協議に必要な書類は、次の通りです。

  1. 都市計画法第32条による協議について
  2. 設計説明書
  3. 新たに設置される公共施設一覧表
  4. 従前の公共施設一覧表
  5. 位置図
  6. 現況図
  7. 計画平面図
  8. 個別に必要な図面等

1~7までの書類は共通で必要です。8は協議する公共施設の管理者によって異なります。
また、細部の書式は各自治体で異なりますので、事前に確認するようにしましょう。

各公共施設管理者との調整

水道

水道局との協議は、水道の計画に関することだけです。
そのため、計画平面図上に水道の本管と本管からの引込の管の種類、口径、位置等を記載します。
どれぐらいの口径で各分譲地に引き込むのかは、一般的な戸建住宅なら1㎜か2㎜程度です。水道の栓の数が多ければ、1度に使用できる水の量が多くなりますので、口径が大きくなります。水道局が引込管の種類や口径など、一般的に使われているものを教えてくれます。水道局や水道の設備業者に相談して進めるようにしましょう。

道路

32条協議の中で最も協議する内容が多く、時間がかかるのが道路担当課との協議です。

開発地に元から接していた道路

道路には、開発する場所に元から接している道路と、開発する土地の中に新しく作る道路(開発道路)があります。
開発する場所に元から接する道路の歩道部分を、車の乗入れのために再構築する際の工事の内容について協議します。
これを歩道切下げといいます。
歩道は、車道より一段高くなっている場合が多いです。このため、車が進入できるように車道の高さに合わせて切り下げる必要があります。
また、舗装も車道用の厚い舗装に再構築する必要があります。
なお、歩道切り下げをする際には、道路工事施工承認という別の許可を得る必要があるため注意しましょう。

開発する土地の中に新しく作る道路(開発道路)

開発道路は、自治体に寄付する場合が多いです。
もちろん、開発申請者の所有のまま自分で管理することも可能です。しかし、その場合は将来にわたって管理費用を捻出し続けることになります。
そのため、一般的には自治体に所有権を移譲し、自治体に管理してもらいます。
しかし、寄付する場合は、道路の幅や道路側溝の種類、アスファルトの厚みなど、道路構造が市の基準通りに作られているかどうかを審査されます。道路構造が基準通りに作られていないと寄付は受け付けられません。工事の際もその基準を確実に工事業者に伝えておきましょう。

道路との境界確認書の写し

開発する場所と道路との境界線が決まっているかを確認するための書類です。
既に境界線が決まっていれば、通常は土地の所有者が持っている書類です。
まだ測量されていない土地であれば、土地家屋調査士に依頼して測量し、境界線を決める立会等をすることによりこの書類が出来上がります。

下水道

雨水最終枡構造図

雨水は、各宅地に降ったものを1つの溜桝に集めて、道路側溝などに接続して流します。
この最終的に雨水が集まるため桝のことを最終桝と呼びます。開発の完了検査時も最終桝と道路側溝がきちんと接続されているか確認されます。雨水の最終桝の構造図は、製品のカタログ等から転写したものを添付しましょう。

下水道の排水計画が記載された計画平面図、それぞれの構造図

下水道の計画平面図は、本管と本管からの取付管の種類、使用する桝やマンホールの種類、口径、位置等を記載します。
桝やマンホールの構造図は、下水道標準設計図として市のホームページで公開されている場合があります。まずはウェブ上で探してみましょう。不明な場合は、下水道設備業者などに作成してもらいます。

消防水利

消防水利とは、消防活動を行う際の水利施設のことです。
この協議は、消防局と行います。
重要なのは、開発する場所で火事が起こった際、消火活動ができるかどうかです。

消防用活動空地

消防用活動空地とは、はしご車が消火活動するための進入路と空地のことです。建物の規模が4階建て以上または高さ12mの場合は必要になります。
消防用活動空地を設けるときは、広さ幅員5m以上、長さ 11m以上、勾配7度未満、ジャッキ加重 10t以上の地盤支持力を有することが求められます。
また、消防用活動用空地の旨を表示するため、マーキング塗装を施すか、看板を設置する必要があります。

消火栓からの位置

開発地が消火栓から120mの範囲内に含まれるかで判断します。
なお、場所によっては100m以内の場合もあります。
消火栓の位置は、水道局で取得できる水道の配管図上に記載されています。
なお、消火栓も、口径によっては消防水利上有効でないと判断される場合もあります。詳しくは消防局に確認しましょう。
もし、範囲内に開発する場所が入っていない場合は、新たに消火栓や防火水槽を設置する必要があります。消火栓や防火水槽を設置する費用は開発申請者負担です。設置が必要かどうかは、早い段階で確認することを推奨します。

消防水利図

消防局との協議には、消防水利図が必要です。
消防水利図は、開発地が消火栓の位置から120mの範囲以内に含まれることを示す必要があります。
消火栓の位置は、水道局で配水管管理図を取得すると、Hの記号で記載されています。そこを中心として120mの円を描き、開発する場所が範囲内に入っていることを示しましょう。

水路

開発する場所の隣に農業用水路があり、雨水などの排水を農業用水路に流す場合、農業施設課と32条協議をする必要があります。
開発しようとする場所は、農地の場合が多いです。特に、田には水を入れたり排水したりするため、農業用水路と接しているものです。
開発する土地を造成して宅地にすることによって、周辺の農地に水を引くことや排水ができなくなるなど、周囲に悪い影響を与えてはいけません。
また、これまで田に水を入れていた給水口や排水口が水路に残っている場合は、今後は廃止するか等、処理方法についても地元の水利関係者と協議しておく必要があります。

農地転用許可

開発地が農地であるということは、同時に農地転用許可申請も必要ということになります。
農地転用許可申請においても、計画によって周辺の農地へ悪い影響を与えないかという部分は、審査される重要なポイントです。また、地元の水利関係者からの同意書も必要です。同時にもらっておきましょう。開発許可申請と農地転用許可申請は、同時申請・同時許可が原則です。
なお、農地転用の詳細については以下のアーカイブから該当する記事を閲覧できます。

農地転用許可 アーカイブ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

埋蔵文化財

埋蔵文化財とは、遺跡のことです。
埋立地のように、後から人工的にできたことが明確な土地であればその可能性はありませんが、以前から存在する土地であれば、開発する土地の下に遺跡が眠っている可能性があります。
開発行為の造成工事によって土を削る場合や、建築物の基礎のために土を削り、眠っている埋蔵文化財に気づかずに破壊してしまうことも考えられます。そのようなことが起きないよう、事前に埋蔵文化財課で、その場所が周知の埋蔵文化財包蔵地内かどうか確認します。
周知の埋蔵文化財包蔵地とは、埋蔵文化財包蔵する土地として知られている土地のことです。つまり、埋蔵文化財がある可能性が高い場所ということになります。包蔵地外であれば、埋蔵文化財が存在する可能性は低いので、今回のように工事に支障なしという回答書がもらえます。
開発地が埋蔵文化財包蔵地内であった場合、文化財保護法第33条の届出書を提出し、造成の計画図面や、建築物の基礎の図面で今回の工事でどれくらいの深さまで土を削るのかを確認します。
この届出に基づき、役所が現地を調査します。
調査の結果、埋蔵文化財が無いことが判明すると、工事をしても問題ない旨の回答書を得られます。
また、埋蔵文化財に関する手続きには、以下の記事でより詳細に解説しております。宜しければ御参照ください。

埋蔵文化物包蔵地の協議書とは?

埋蔵文化物包蔵地の協議書(自治体により細部の名称は異なります)は、文化物の発掘調査が完了していない地域で開発工事等をする際に、事前に必要となる手続きです。

最後に

今回は32条協議について解説しました。
この手続きは複数の管理先と同時並行的に協議が必要となります。
自分で完結することが難しい場合は、行政書士等に相談してみましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が開発許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧くだ さい。
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