埋蔵文化物包蔵地の協議書とは?

埋蔵文化物包蔵地の協議書(自治体により細部の名称は異なります)は、文化物の発掘調査が完了していない地域で開発工事等をする際に、事前に必要となる手続きです。
これは主に開発工事等の許認可を申請する際に連接して必要となることが多い手続きです。
また、農地転用の場合であっても4条・5条許可(届出)の場合は自治体から申請を求められることがあります。
なお、逆に言えば、この手続き自体を単体で申請することはまずありません。
ほぼ100%何らかの掘削を伴う工事に関わる許可申請の事前手続きとして発生します。
この手続きは存在自体がメジャーではありません。筆者も農地転用の手続きを進める際に「え!?そんなの必要なの?」と驚いたことがあります。
そこで、今回は埋蔵文化物包蔵地の協議書の概要について解説します。
いざ工事の申請をする際に面を食らわないようにしましょう。

埋蔵文化物包蔵地の協議書

埋蔵文化物包蔵地の協議書の概要

埋蔵文化物包蔵地とは?

まず、埋蔵文化物とは土中の遺跡や古墳、土器等の遺物を総合的に指す言葉です。
この埋蔵文化物が存在する可能性がある土地を埋蔵文化物包蔵地と呼称します。
大抵の自治体では、教育委員会または文化振興課等が対象地域を管轄し、埋蔵文化物の調査をしています。
調査の結果、埋蔵文化物が発見されなかった場合は埋蔵文化物包蔵地の対象から外されていきます。
しかし、日本の国土は広大です。
行政庁が全ての埋蔵文化物包蔵地を事前に発掘調査することは到底不可能です。
そのため、埋蔵文化物包蔵地において工事を希望する事業者がいた場合、その都度、該当地域について優先的に試掘を実施して遺跡等が無いかを確認する手法を取っているのです。

埋蔵文化物包蔵地の指定地域を調べるには?

埋蔵文化財の発掘調査は各自治体ごとによって行われます。
そのため、基本的には各自治体の担当部署に直接確認する必要があります。
電話やメール等で住所を伝えるだけで対応してくれる自治体もありますが、中には直接足を運ぶ必要がある自治体もあるでしょう。
遠隔地のため担当部署に行くことが難しい場合は、近傍の行政書士等に相談してみましょう。

もし発掘調査の結果、埋蔵文化物が発見されたら

自治体の試掘の結果、埋蔵文化物が発見された場合はどうなるのでしょうか。
基本的には、行政庁と工事事業主が工事の方法等について協議をすることになります。
具体的には、埋蔵文化物を破壊しないように盛土をする、掘削位置を変更する等の措置ができないかが検討されます。
すなわち、よほどの重大な発見がされない限り、工事自体はすることができます。
つまり、「その場所だけは掘り起こさないでくれ」とお願いされるのです。
これは、埋蔵文化物等は無暗に掘り起こさず現状保存のままが最も価値が高いと考えられているためです。
積極的に発掘して世に出した方がいいのでは?と思われた読者の方もいらっしゃるでしょう。筆者も最初はそう思いました。
しかし、国家の経済的発展と埋蔵文化物の学術的な価値を天秤にかけることは非常に難しいのです。
本格的な発掘調査のために工事を中止させ、発掘結果が「遺跡でも何でもありませんでした」では経済的な損失は計り知れません。
工事の工期は大幅に遅れてしまいますし、原則として国家からの賠償・補償はありません(国家に非が無いため)。
これでは建設工事を請け負ってくれる建設業者はいないでしょう。
そのため、経済的発展と学術的保護を折衷させてこのような措置がされているものだと思われます。

埋蔵文化物包蔵地の協議書の提出期限

自治体により細部の扱いは異なりますが、概ね工事開始の30~60日前までに提出することが求められます。
工事の一週間前に提出しても間に合いません。
計画的に作成、提出できるように気を付けましょう。

埋蔵文化物包蔵地の協議書の記載項目

これも自治体により必要な記載項目が異なるため一概には言えません。
ですが、大抵の場合、以下の事項を記載する事が求められます。

  1. 申請者の住所氏名(代理人申請の場合はその住所氏名)
  2. 工事開始時期
  3. 工事の目的(住宅建設等)
  4. 工事場所の住所
  5. 施工面積
  6. 工事場所の案内図

その他、建設する建物等の設計図等の図面、予定地の写真を求められることもあります。

その他に注意すべきこと

行政庁の試掘の結果、埋蔵文化財が発見されたが工事計画的に現状保存できない場合は、本格的な発掘調査と記録保存がされます。
この際の調査費用は原則として工事を実施する事業者負担となります。

土木工事等の開発事業の届出等があった場合,都道府県・政令指定都市等の教育委員会はその取り扱い方法を決めます。そして協議の結果,やむをえず遺跡を現状のまま保存できない場合には事前に発掘調査を行って遺跡の記録を残し(記録保存),その経費については開発事業者に協力を求めています(事業者負担)。

埋蔵文化財 | 文化庁 (bunka.go.jp)

最後に

今回は埋蔵文化財包蔵地の協議書について解説しました。
自分で完結することが難しい場合は専門とする行政書士に相談してみましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が開発許可や農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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