開発行為許可通知書を受け取ったら? 工事完了までの手順
開発許可申請書を提出し、晴れて許可通知書を受領してからもやるべきことは終わりません。
むしろ、ここからが本番と言っても過言ではありません。
ここから先の工程は、1つでも飛ばしてしまうと工事がやり直しになる場合もある重大な工程が多々あります。
今回は、許可が降りた後から工事完了までの一連の流れについて解説します。
目次
開発行為許可通知書の受領
開発行為許可申請書類を提出して、約30日後に開発行為許可通知書が発行されます。この日数は標準処理期間です。審査の状況で多少前後することがあります。
許可が降りれば役所から連絡があります。許可申請時に受領した受付証と引換えに、開発行為許可通知書を受け取りましょう。
通知書には、許可処分に不服がある場合に、どのように訴えたらよいかや、工事をする際等の一般的な注意事項が記載されています。
また、開発行為許可標識を現地の見やすい場所に設置することや、土砂や水などが道路に流出して周りに迷惑をかけないように安全に工事をするようにといった注意喚起も記載されています。
その他の法令による許可
農地法の許可
農地法の許可は開発行為許可申請と密接な関係があります。開発する場所が農地の場合は、農地法の許可済みであることも確認してから工事に着手しましょう。
道路法24条許可申請
開発する場所にもともと接する道路の歩道部分を、車の乗り入れのために再構築する際の工事を歩道切下げといいます。
歩道の切下げ等が発生する場合、歩道の切下げ工事は、道路を管理している建設課などに道路法第24条許可申請をして、承認を得てから工事することになります。この許可のことを道路工事施行承認申請といいます。
こちらも農地法の許可と同様に、開発許可申請前に許可を取得する必要があります。
工事着手後に必要な事
開発行為許可標識の設置
開発行為許可標識とは、開発許可の概要を書いた看板のことです。
現地に開発行為許可標識を立ててから造成工事に取りかかることになります。
開発行為許可標識は看板業者に制作・設置まで依頼するのが一般的です。
開発行為予定標識の設置が義務付けられている自治体であれば、申請前に既に開発行為予定標識は設置されている筈なので、開発行為予定標識を外して開発行為許可標識と入れ替えればいいだけです。
設置した後は、近景と遠景で開発行為許可標識の写真を撮ることを忘れずにしましょう。
工事工程写真の準備
工事完了時に工事工程写真を提出しなければなりません。そのため、工事施工業者に写真撮影を依頼しておく必要があります。
工事工程写真とは、工事の途中の状況の写真です。
工事工程写真を提出するのは、開発工事が設計図面通りに行われているか確認するためのものです。
開発工事は、擁壁の基礎の部分や、鉄筋の配筋状況、道路の舗装状況、下水道工事など、完成してしまったら地中に埋没して視認できなくなるものがほとんどです。工事工程写真は、工事の途中でしか撮影できません。
そのため、工事着手前に工事施工業者に確実に伝えておく必要があります。
工事完了後に工事工程写真が無い場合、一部分を壊して確認したり、工事のやり直しもあり得ます。十分に注意しましょう。
写真の種類
工事完了検査に備え、次の各種工事工程について写真記録を行います。次の例示に記載がない部分においても、施工後埋戻し等により確認できない部分については、施工状況がわかるように適切に撮影を行うことが大切です。
特に、構造に影響が大きい施設(橋梁、ボックスカルバートなど)は、詳細に施工状況の撮影を行うことが必要です。
とにかく、写真は撮りすぎるということはありません。事あるごとに撮影するようにしましょう。
擁壁工事
擁壁の種類・形状ごとに整理するようにしましょう。
- 掘削の完了
掘削幅、基礎砕石の状況(幅・厚み)、※捨てコンの状況(幅・厚み)
※捨てコンとは
建物を建てる前の地盤に流し込むコンクリートのこと - 基礎配筋の完了
上端筋、下端筋それぞれの鉄筋径、ピッチ - 壁配筋の完了
全面筋、背面筋それぞれの鉄筋径、ピッチ - 各コンクリート打設の完了
基礎底盤、竪壁などそれぞれの部位の幅・厚み等 - 練積み造擁壁を下端から2分の1の高さまで築造完了
裏込め砕石等の状況(下端等の厚み)、 止水コンクリートの状況(幅・厚み)、透水マットの設置 - 練積み造壁築造完了
裏込め砕石等の状況(上端等の厚み)、擁壁上端幅、擁壁の高さ・勾配 - 擁壁背面の埋め戻し状況
一層ごとの厚さ、締固めごとの転圧状況、止水コンクリートの状況 (幅・厚み)、透水マットの設置、水抜き穴・パイプの状況(口径)
盛土工事
- 集水施設の完了:
管径や暗渠寸法、砕石等の厚み - 急傾斜面の段切りの完了
段切り幅 - 軟弱な地盤改良等の工事の完了
地盤改良の施工中の状況についても撮影すること
下水道工事
- 掘削の完了
掘削幅、基礎砕石(幅・厚み)、基礎コンクリート(幅・厚み)の状況・完了 - 軟弱な地盤における下水道施設の基礎工事の完了
地盤改良の施工状況・完了 - 主要な管渠の敷設の完了
管渠敷設、埋戻しの状況・完了
道路工事
- 側溝敷設の完了
側溝敷設、雨水取付管口処理、埋戻しの状況・完了 - 道路構造物設置の完了
掘削幅、基礎砕石(幅・厚み)、基礎コンクリート(幅・厚み)の状況・ 完了 - 舗装工事の完了
表層〜下層路盤までの各層(厚み)、乳剤散布の状況・完了
流域貯留施設工事
- 掘削の完了
掘削幅、基礎砕石(幅・厚み)、基礎コンクリート(幅・厚み)の状況・完了 - 底版の配筋の完了
鉄筋径、ピッチ - 床版の配筋の完了
鉄筋径、ピッチ - オリフィスの施工完了
※オリフィスの寸法、設置高
※オリフィスとは
流体制御弁のこと。流れる流体の圧力を一手にする目的で使用されます。
造成工事着手・工事着手届出書の提出
現地に開発行為許可標識を設置し、造成工事に着手したら、工事着手届出書を役所に提出します。
工事着手届出に必要な書類は、次のとおりです。
1 工事着手届出書
2 設置後の開発行為許可標識を撮影した写真(遠景、近景)
写真は開発行為許可標識を遠景と近景で撮影した写真をエクセル等に貼り付けて印刷しましょう。
また、造成工事期間中は、逐次現地の状況を確認して、図面通りに工事が進んでいるか確認しましょう。
工事施工業者から現地に呼ばれ、図面通りに施工するのが困難なので施工方法を変更したいと相談されることもあります。
変更の度合いにもよりますが、開発行為変更届出や開発行為変更許可申請をしなければならない場合もあります。途中で変更する必要が生じた場合は、その都度、役所に確認を取りましょう。
また、工事がある程度進んで、コンクリートブロックや道路側溝などの構造物が設置されたら、土地家屋調査士に依頼して、分筆登記を済ませておきましょう。
造成工事完了・工事完了届出書の提出
造成工事が完了したら、工事完了届出書に必要事項を記入して、役所に提出します。
工事完了届出に必要な書類は、次のとおりです。
- 工事完了届出書
- 位置図
- 公図(原則として分筆、合筆登記済み)
- 竣工図
- 工事写真(着手前・完了写真、工事工程写真、境界標の写真)
公図の分筆、合筆登記済みとは、複数の土地を1つに合成したり、もともと1つだった土地をいくつかに分割したりする登記を完了させた状態の公図を添付するということです。
例えば、の3区画の分譲の場合、土地を3つに分割します。
土地の境界や分割点には、境界標を土地家屋調査士が設置していますので、その写真も添付します。
竣工図は、完成図面のことです。土地利用計画図のとおりに施工されていれば、土地利用計画図がそのまま竣工図になります。
地積測量図
土地家屋調査士に分筆登記を依頼して完了すると、地積測量図という図面が法務局に登録されます。
地積測量図には、土地をどのように分筆したのか、境界点の各ポイント間の距離や、座標値、分割された土地の面積を計算した表などが載っています。
工事完了届出の際、これも添付します。
下水道引継書類の提出
工事完了届を提出したら、下水道の引継書類を役所に提出します。
下水道引継書類に必要な書類は、次のとおりです。
- 公共施設(下水道)の引継について
- 位置図
- 施設平面図(竣工図のこと)
- 施設縦断図
- 各種構造図
- 公共施設の各種占用許可関係図書
工事完了検査
工事完了届出書を提出したら、開発担当の課と工事完了検査の日程を調整します。
それによって工事完了検査の予定日時がわかったら、工事関係者に来てもらえるよう連絡しておきましょう。
工事完了検査の当日は、役所の関係する部署が現地の竣工状況を検査します。
施工業者に確実に立会させるようにしましょう。
審査されるポイントは、開発区域の境界線が明確か、道路や擁壁などのコンクリート構造物・下水道施設が図面どおりに施工されているか等です。
工事完了検査済証の発行、工事完了公告と建築工事の着手
無事に工事完了検査が終わり、特に工事のやり直しや補修などがなければ、通常は1週間程度で開発担当の課より工事完了検査済証が発行されます。
工事完了検査済証が発行されてから2週間経過後に、公報に工事完了公告が載ります。
なお、2週間という期間は、許可をする都道府県や市によって違いますので確認してください。
工事完了の公告がされたら、開発行為許可申請の手続は完了です。
この工事完了公告がされた後でないと、建築工事に着手してはいけません。十分に注意してください。
工事完了公告前の建築制限
開発工事が完了する前に建築工事が行われると、開発許可どおりの公共施設の整備が行われず、開発許可制度の目的が達成できなくなるおそれがあります。そのため、都市計画法では、工事完了公告前に建築工事に着工してはならないと規定されています。
しかし、例外があります。
それは、現場事務所のプレハブなど、工事用の仮設建築物を建築する場合や、都道府県知事が支障がないと認めたときなどです。
工事用の現場事務所は簡単に想像できると思います。
では、都道府県知事が支障がないと認めるときとはどんな場合でしょうか。
これは、開発許可をする都道府県によって違いはありますが、開発工事の工程上やむを得ない場合となります。
例えば、造成工事と建築工事が不可分一体の場合、開発で設置する擁壁と建築物の壁が一体構造の場合等です。
最後に
今回は開発許可取得後から工事完了までの流れについて解説しました。
この記事で紹介した必要書類は一般的に必要とされるものを纏めたものです。開発行為の内容によっては各自治体で必要となる書類の増減があるため、最終的には所轄の役所に確認するようにしましょう。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が開発許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧くだ さい。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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