開発許可の概要: 申請から許可まで道のり

開発許可とは、建物を構築する際に必要となる許認可のうちの一つです。
開発許可は農地転用やその他の許認可とも深い関りがあります。
今回は、開発許可の概要について解説します。

開発許可の目的とは

一定規模以上の開発行為を行う場合は、都市計画法に基づく開発許可が必要になります。
開発許可制度の目的は、乱開発を防止し、暮らしやすい街作りをすることです。
では、開発行為とは、どのような行為なのでしょうか?
開発許可をするのは都道府県ですが、政令指定都市や中核市などの人口の多い市では、市が許可する場合もあります。
まずは、開発する場所を管轄する市役所の開発担当の課に相談してみましょう。

開発行為の定義

開発行為とは、建築物を目的として、土地の区画の変更、形の変更、または質の変更を行うことです。
建築物ではありませんが、コンクリートプラントやアスファルトプラントなどの大規模なものを目的としても開発行為になります。しかし、これらは極めて例外的な場合と言っていいでしょう。

開発行為に似て非なるもの

開発許可は「建築物を目的として」という部分が前提です。建築物を目的としなければ、たとえ土地の区画の変更、形の変更、または質の変更のいずれかを行っても、開発行為ではありません。
例えば、建築物のない駐車場や資材置場などを作る場合は開発行為に該当しません。

区画の変更とは

区画の変更とは、道路や公園などの公共施設を新たに作ったりすることです。
例えば、分譲地を作るときに、土地の中に新しく道路や公園を作る場合です。

形の変更とは

形の変更とは、土を盛ったり、削ったりすることです。
土をどこかから運んできて盛ることを盛土、土を削ることを切土といいます。そのように盛土や切土をして、宅地などにすることを造成工事といいます。
ただし、この場合には盛土規正法の許可も関係します。
以下の工事をする場合には、開発許可とは別に盛土規正法の許可が必要となります。

  1. 切土工事:切土部分に2mを超える崖が生じるもの。
  2. 盛土工事:盛土部分に1mを超える崖が生じるもの。
  3. 切盛土工事:盛土部分に1m以下の崖が生じ、かつ切土と盛土を合わせて2mを超える崖が生じるもの。
  4. 1~3以外の造成工事で、切土または盛土の面積が500㎡を超えるもの。

質の変更とは

質の変更とは、農地など宅地以外の土地を宅地に変更することです。
例えば、田や畑などの農地を造成して宅地にする場合です。つまり、地目変更を伴うものが質の変更になります。

許可の対象となる規模(開発許可が必要・不要な場合)

一定規模以上の開発行為は開発許可が必要となります。
この、一定規模とはどれくらいの面積なのでしょうか?
この一定規模は、開発する土地がどの区域に入っているかで変わってきます。

まず、大きく分けて、都市計画区域内か、都市計画区域外かとなります。
そして、都市計画区域でも、市街化区域と市街化調整区域に区域を分けている市区町村と、区域を分けていない市区町村とがあります。
市街化区域と市街化調整区域に区域を分けること線引きと言います。
区域を分けている都市計画区域を線引都市計画区域、区域を分けていない都市計画区域を非線引都市計画区域と呼称します。
区域によって開発許可が必要になる面積は違います。
該当地域がどの区域に該当するかは、国土交通省のウェブマッピングシステムで簡単に調べることができます。ただし、常に最新の情報になっているとは断言できないため、必ず所轄役所に確認を取るようにしましょう。

市街化区域

市街化区域とは、市街化を促進する区域です。
この区域内で1,000㎡以上の面積の開発行為をする際は開発許可が必要になります。ただし、自治体によってはより厳しい基準を設けている場合もあるため、事前に役所に確認をしましょう。

市街化調整区域

市街化調整区域とは、市街化区域とは逆に市街化を抑制する区域です。
そのため、基本的には建築してはいけない場所です。市街化調整区域では、一定の面積以上なら許可が必要などという面積規定はありません。
つまり、開発行為がある場合は面積に関係なく、原則として開発許可が必要となります。

非線引都市計画区域と準都市計画区域

非線引都市計画区域と準都市計画区域では、3,000㎡以上の開発行為がある場合に開発許可が必要になります。
準都市計画区域とは、もともと都市計画区域外だった場所に、規制をかける必要が生じた場合に指定される区域です。

都市計画区域外

都市計画区域外で10,000㎡以上の開発行為がある場合は、開発許可が必要になります。
比較的規制が少ない区域と言えるでしょう。

開発許可取得に必要な期間の目安

開発許可にはかなりの時間がかかります。工事期間も含めると半年~1年単位の場合もあります。
開発許可の手続を大きく分け、大体の期間を計算すると、最低でも約5か月はかかります。
手続の流れは主に以下のようになります。

  1. 事前協議手続:約1か月
  2. 32条協議:約1~2か月
  3. 開発行為許可申請:標準処理期間1か月
  4. 造成工事:規模によるが通常1か月以上
  5. 工事完了手続:約1か月

行政書士に依頼した場合

開発許可に関して不安な点がある、面倒なことは任せたい、自分で申請する時間の余裕がないという方は、行政書士等の専門家を利用することをおすすめします。
ただし、行政書士に依頼する場合は、開発許可を専門に扱っているかどうかを事前に確認しましょう。
行政書士は、取扱分野が幅広く、自分の専門分野以外のことはあまり知識がありません。
さらに、開発許可は行政書士の業務の中でも大変珍しいな分野です。取り扱っている行政書士が少ないのも特徴です。
行政書士への相談では、まず、どの場所でどれぐらいの規模、何を計画しているかを伝え、そもそも開発許可が必要なのか、また、許可が必要だとして許可の要件を満たしているのか判断してもらいます。資料としては、ゼンリン地図などの場所がわかるもの、法務局で取得できる公図と登記事項証明書、ある程度の計画ができているなら計画図面などもあるとよいでしょう。

料金見積・全般工程の提示、業務委任契約書の締結

行政書士が案件を受任できる場合は、サービス内容や行政書士報酬の見積りの金額、全般工程の提示があります。
内容に納得できたら依頼となりますが、開発許可申請は一般的に報酬額も高額です。また、期間もかかることは覚悟しなければなりません。
また、当然ですが行政書士に依頼したからといって、確実に許可が降りるわけではありません。行政書士はあくまでも申請書類作成の代理人です。妥当性のある施工計画は依頼人側が立案・作成しなければなりません。
また、契約や報酬の支払方法は、事務所ごとに異なりますので、事前に確認が必要です。

土地の測量、現況図・計画図面の作成、書類の収集と申請書類作成

まず、土地の測量がされていなければ、土地家屋調査士に依頼して測量・現況図の作成・境界確定をしてもらいます。この作業は行政書士ではできません。土地家屋調査士の独占業務です。
現況図ができたら、作成した大まかな計画図面を基に、行政書士が開発許可申請用に修正するか、打合せして計画図面を行政書士に作成してもらうかです。
建築物が目的ですので、建物の設計を建築士が担当している場合も多く、その場合は建築士が作成した計画図を基にします。
必要書類の収集と開発許可申請書類の作成は行政書士が行います。

各種申請書類の受理

開発許可申請では、打合せ、申請や届出書類の受理、図面の修正等何度も役所に足を運ぶことになります。
行政書士に依頼しておけば、それらのほとんどを代行してもらえます。

完了検査の手配

完了検査に準備する工事工程写真を工事施工業者に手配したり、日程の段取り等の役所との調整も通常は行政書士が行います。
ただし、工事完了検査の立会は工事担当者が実施しなければなりません。これは工事の内容に関する検査なので、工事担当者以外は原則として立ち入ることはできません。

行政書士に依頼した場合の費用は?

報酬額は、事務所ごと、また、開発行為の規模等によって変わってくるので一概には言えません。
しかし、小規模の開発でも通常は数十万円の報酬額がかかります。
ちなみに、令和2年度の行政書士報酬統計によると、開発許可の平均報酬額は62万円、最大値は400万円となっています。
決して安い金額ではありません。しかし、かなりの業務量と精神的負担が軽減されますので、検討の余地はあると思います。

自分で申請を進める場合はどうなるか?

自分で申請を進める場合は、前項の全てを自分でやることになります。相当な業務量と精神的負担があります。
また、開発許可は、書類を揃えて1度申請すれば許されるものではありません。何十回も役所に足を運ぶことになります。
それも、同じ市役所でも担当の課は細かく分かれています。消防署や水道局など、市役所の建物とは別の場所に足を運ぶこともあります。
また、開発行為は開発許可だけを取得すれば良いわけではありません。通常、農地転用許可や盛土規正法許可、埋蔵文化財包蔵地許可等の他の法律で規制されている許可も複雑に関係します。これらの複雑に絡んだ糸を根気よく解いていかなければなりません。

最後に

今回は開発許可の概要について解説しました。
開発許可を自分で申請する場合は、相当な業務量と精神的負担があることを覚悟しましょう。
もし、自分では対処しきれないと感じた場合は、専門とする行政書士等に相談することを推奨します。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が開発許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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