夫婦関係と第三者の関与:不貞行為に伴う慰謝料請求の判例解説

不倫問題は、個人の信頼関係と家庭の安定に直接影響を与えるセンシティブな事柄です。
特に、夫婦の一方が第三者と不貞行為に及んだ場合、その関係が夫婦の離婚にどのように影響するかは、法律的にも非常に複雑な問題となります。
今回は、最高裁判例に基づき、不貞行為の相手方に対して離婚に基づく慰謝料を請求できるかについて解説します。
【判例 最高裁判所第三小法廷 平成31年2月19日

事件の概要

本件は、被上告人が上告人に対して、上告人が被上告人の妻であったAと不貞行為に及び、これにより被上告人が精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく慰謝料を請求した事件です。

事件の背景

  1. 被上告人とAは平成6年に婚姻し、2人の子供をもうけました。
  2. 被上告人は、仕事の都合で家庭にいる時間が少なく、平成20年にAが上告人の勤務先に入社した後は、Aとの夫婦関係が冷え切っていました。
  3. 上告人は勤務先でAと知り合い、翌年にはAと不貞行為に及ぶようになりました。
  4. 被上告人は平成22年に不貞関係を知り、Aは不貞行為を解消しましたが、夫婦関係の修復には至りませんでした。
  5. 平成26年にAは被上告人と別居し、その後も連絡を絶ちました。被上告人はその年の11月に家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立て、翌年2月に離婚調停が成立しました。

判決の詳細

原審では、上告人とAとの不貞行為によって婚姻関係が破綻したため、上告人は不法行為責任を負い、被上告人は離婚に伴う慰謝料を請求できるとされました。しかし、最高裁判所はこの判断を覆しました。判決の理由として、第三者が不貞行為を行ったとしても、離婚に至るかどうかは基本的に夫婦の問題であり、単に不貞行為をしただけでは離婚の責任を第三者に負わせることはできないとされました。

判決のポイント

第三者が不貞行為に加えて夫婦の婚姻関係に対する不当な干渉をして離婚に至らせたと認められる「特段の事情」がない限り、第三者に対して離婚に伴う慰謝料を請求することはできません。本件では、Aと上告人との不貞行為は解消されており、離婚成立までの間に特段の事情は見当たらないとして、被上告人の請求は認められませんでした。

まとめ

この判例は、夫婦の一方が第三者と不貞行為を行った場合でも、ただちに第三者が離婚の責任を負うことはないという判断を示しました。特に、第三者に対する慰謝料請求には、単なる不貞行為だけでなく、離婚を意図した不当な干渉という特別な事情が必要であることを強調しています。これにより、離婚に至った夫婦間の責任が明確にされ、不貞行為に関する法的な判断基準が示されました。

最後に

今回は不貞行為の相手方に対して離婚に基づく慰謝料を請求できるかについて解説しました。
いろいろと納得がいかない部分もあるかもしれませんが、今回の焦点はあくまでも「離婚に伴う」慰謝料であるという部分が最大のポイントです。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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