行政書士の専門業務の取扱比率ランキング

今回は前回から引き続き「日本行政 令和6年3月号」に掲載されている調査結果の解説です。
今回のテーマは「令和5年行政書士実態調査から見る現在の行政書士の専門業務の取扱比率」です。
登録したての方や、これから登録を検討されている方にとって、何を専門業務とすべきかは悩ましい問題です。
そこで、今回は当該調査結果に基づき、専門業務の取扱比率の上位10業種について解説します。
今後の業務の資としていただければ幸いです。

※今回は娯楽記事です。

前提:この調査結果はあくまでも一例です

これから記事を読み進める前に、一点注意事項があります。
それは、この調査結果に左右されることなく、最終的には自分で専門業務を決定しなければならないということです。
「何を言っているんだ、そんなの当り前だろう」と思われる方が大半かと思います。
しかし、ごく稀にこのようなデータに影響され、本来自分がやりたかった分野を放棄して別の分野に手を出す方がいます。
残念ながら、それでは本末転倒です。
せっかくサラリーマンや公務員という命令で動く組織から解脱し、自分の自由意志でやりたい業務を選択できる士業になった利点が著しく損なわれます。
まずは「儲かるかもしれない」と思う分野ではなく「楽しそうだ」と思える分野を選択して下さい。
過去の経歴や知識は一旦忘れて下さい。
真に心の躍動する分野が貴方に最適の分野です。

現在の行政書士の専門業務の取扱比率

それでは、早速調査結果を見てみましょう。

ぶっちぎり第1位:みんなの憧れ「相続・遺言」

やはり第1位は「相続・遺言」で11.9%でした。2位以下を大きく引き離しての第1位です。
いかにも法律家といった王道中の王道業務でしょう。誰もが一度は専門業務にしようと検討したことがあるかと思います。
自分も正直に言えば開業前はこの業務を専門とする予定でした。

人間はいつか必ず最期が訪れます。その不安を解消し、依頼人に寄り添うことができる当該業務は人気が出るのも頷けます。
また、少子高齢化が叫ばれる昨今、この業務は今後一層需要を増していくことでしょう。

第2位:行政書士といえばこの業務!「建設業」

第2位は建設業で9.2%です。隣接業務であるCCUSの1.2%も含めれば10.4%にも上ります。
やはり行政書士=建設業というパブリックイメージがある通り、この業務はかなり熱いですね。
なお、絶対に無くなることが無いインフラ関係業務であるため、今後も一定の需要を確保し続けられる分野であることは間違いありません。

また、この分野は申請の難易度は高いのですが解説書籍も広く出回っています。そのため、意欲さえあれば新規参入も比較的容易です。

当事務所HPでも多くの解説記事を書いています。よろしければ御参照ください。
建設業許可 アーカイブ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

第3位:なんで!??「農地法関係」

第3位は「農地法関係」で6.0%です。
個人的にはこの結果には疑問を感じます。
なぜなら、農地法関係というカテゴリー自体がガバガバすぎるからです。
おそらく、代表的な農地転用はもちろん、農振除外や非農地証明や単なる所有権移転等の関連業務も包括されているのかと思います。
実際にこれらの業務を実施したことのある自分から見ると、あまりにもカテゴライズが大雑把ではないかと感じます。
また、正直に言えば農地転用等は費用対効果はそれほど高くありません。申請から許可が降りるまで最低でも1か月近くかかります。
そのため、ここまで人気業務とは思えないというのが正直な感想です。

なお、当事務所HPでも多くの解説記事を書いています。よろしければ御参照ください。
農地転用許可 アーカイブ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

第4位:まさかの同率「契約書作成」と「車庫証明」

第4位は同率4.8%の「契約書作成」と「車庫証明」です。車庫証明の正式名称は自動車保管場所証明申請ですが、ここでは便宜上、車庫証明と呼称します。
契約書作成もいかにも法律家然とした業務なので人気が高いのでしょう。
また、車庫証明は申請難易度が低く初心者でも参入しやすい分野です。まずは車庫証明で経験値を積んでから難易度の高い許認可に進む人もいるようです。
なお、車庫証明のやり方については以下の記事で解説しています。よろしければ御参照ください。

保管場所の所在地図とは?【車庫証明】

目次1 保管場所とは2 使用本拠地とは3 どちらも所在地を示す地図が必要4 あまりにも雑な地図だと不受理になる? 保管場所とは 車両を購入する際は必ず警察署に保管場所及…

まあ、これについては順当な結果といえるでしょう。

第5位:こちらも王道「入管業務」

第5位は「入管業務」で4.7%です。
外国人労働者の受け入れを国策で推進している今、需要がますます高まる分野でしょう。
また、この業務は専門の研修を受講し試験に突破した行政書士でなければ取扱いができません。いわゆるピンクカード保有者ですね。
そのため、他の行政書士との差別化を図りたい方にはお勧めの業務です。

第6位:建設業の親戚「産廃業」

第6位は「産廃業」で4.3%です。
これは建設業とも深い関係があります。
事業で出た廃棄物を運搬するためにはほぼ必須の許可なので、需要は高いです。
また、申請自体も比較的容易です。ただし、積み替え保管や一般廃棄物収集運搬は非常に難易度が高いので注意が必要です。

第7位:他士業との連携が前提となる「株式会社等設立」

第7位は「株式会社等設立」で3.6%です。
これがランクインしているということは、日本の経済活動が活発化しているという兆候なのかもしれません。誠に嬉しい限りです。日経平均株価が歴代最高値を更新した今、経済発展に伴いますます需要が高まる可能性があります。
ただし、行政書士の宿命として法人登記までは実施できません。そのため、司法書士との連携が必須となります。

第8位:意外なダークホース「古物・質屋営業」

第8位は「古物・質屋営業」で3.5%です。
これは個人的にかなり意外でした。自分もそういった業務があることは知っていましたが、正直に言えばマイナー業務の一つだと思っていたからです。
なお、古物商の許可取得はかなり申請が簡単なようです。自分の知り合いの先生の中に後学のために自ら取得した方がいます。その先生曰く「非常に簡単に取得できた」とのことですので、初心者向きの業務なのかもしれません。

第9位:またしてもメジャー業務「自動車登録」「補助金等申請」

第9位は「自動車登録」と「補助金等」で同率3.3%です。
自動車登録は行政書士の代表的な業務の一つです。やはりこれはいつの時代も強いですね。
また、補助金等申請は正確には行政書士の独占業務ではないのですが、専門的な知識を有する行政書士が活躍しやすい領域です。また、成功報酬が高額になりやすく、非常にリターンが良い業務です。

第10位:これも王道「宅建業」「議事録・定款・就業規則」

第10位は「宅建業」と「議事録・定款・就業規則」で同率2.7%です。
宅建業はこの世に不動産業が存在する限り無くなることは有り得ないので妥当かなと思います。

しかし、議事録・定款・就業規則がここにランクインするのは意外でした。というより、定款と就業規則は第7位の株式会社等設立と一部重複しているのではないかと思います。一体どういう所から依頼が来るのか想像が付かないですね。(多分、商工会議所の青年部かな?)

まとめ

結果をまとめると以下のようになります。

  1. 相続・遺言
  2. 建設業
  3. 農地法関係
  4. 契約書作成、車庫証明
  5. 入管業務
  6. 産廃業
  7. 株式会社等設立
  8. 古物・質屋営業
  9. 自動車登録、補助金等申請
  10. 宅建業、議事録・定款・就業規則

こうして見ると、やはり上位にランクインするのはメジャー業務ばかりですね。まあ、当然ですが…
ただ、これ以外の業務であっても十分に今後発展する可能性は十分にあります。
目先の数字に捕らわれることなく、自分の直感を信じて専門業務を選択しましょう。

最後に

今回は行政書士の専門業務の取扱比率について解説しました。
余談ですが、聴聞・弁明・行服審査が0.0%というのはあまりにも無情な数字ですね。特定行政書士とは一体…

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が行政書士について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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