不動産登記簿とは?農振除外に必要な書類を解説

農振除外の手続きには申請書以外にも別紙や添付書類が多々必要です。
今回は、添付書類のうちの一つである「不動産登記簿」を解説します。
これは前回の記事で解説した「公図」と同じく、全国の自治体で例外なく必須の資料です。
また、農振除外に限った話ではなく、その後の農地転用の手続きでも当然に提出を求められます。

不動産登記簿の目的

不動産登記簿とは、土地の面積・地目、所有権者やその他の権利の状態を記録したものです。
この書類は申請者が作成するものではありません。元から法務局に備え付けられています。また、建物の登記簿は存在しないことも有り得ますが、土地の登記簿はほぼ確実に存在します。
取得するためには法務局に行くか、もしくはインターネットで取得します。
ただし、令和6年現在ではインターネットで取得した不動産登記簿は使用不可とする自治体もまだ多いです。
例えば、広島県内でも東広島市はインターネット取得した不動産登記簿を農地関係手続きで使用することを認めていますが、呉市では認めていません。
取得する前に所轄の役所に確認するようにしましょう。

不動産登記簿の概要

では、ここで不動産登記簿のヴィジュアルを確認してみましょう。

このように、不動産登記簿は記載事項が多いため、初見ではどの部分が農地関係の手続きにおいて重要なのか分かりにくいかと思います。
以下、必ずチェックすべき項目を解説します。

表題部

上半分の段落部分を表題部といいます。
これは面積や地目等の土地の物理的状況を表示しています。

所在及び地番

これは土地の住所にあたる部分です。申請書類に住所を記載する際は、この表記を省略せずにそのまま転記します。
たとえば、「〇市〇町△△1丁目100番」という所在・地番であれば、「〇市〇町△△1ー100」のように省略してはいけません。登記簿に記載されている通りに一字の誤差無く転記しましょう。

地目

これは土地の使用目的です。
農地関係手続きの場合は、まずここが農地(田、畑、牧草放牧地等)になっていることを確認しましょう。
意外なことに、農地という土地は自然潰廃によって勝手に地目が農地から原野や森林に変更されていることがあります。これは市の農業委員会が定期的に農地の視察をしているため、明らかに原生林と化している農地は地目を変更することがあるからです。流石に所有者に地目変更の事実を通知はするでしょうが、所有者が失念して農地のままであると誤認している場合もあります。
「いや、それは流石に無いだろ…」と感じた読者も多いかと思います。しかし、過去に自分が依頼を受けた案件に実際にそのようなケースがありました。
当然ですが、農地法の規制対象は農地に限定されるため、地目が農地でなくなれば適用除外です。農地転用許可の必要はありません。
ただし、難しいのは農振除外手続きです。農振地域は農地法ではなく農振法によって規制されています。
そのため、非農地証明等により地目が農地以外のものになったとしても、原則として農振地域であることには変化がありません。そのため、売買をする際には農振除外手続きを経なければなりません。なかなか融通が利かない制度ですね。

地積

これは面積のことです。申請書に記載する際はこの数値を記載します。
たとえ過去に確定測量を実施し、登記簿上の地積と実態の地積が異なることが判明していたとしても、申請書に記載する面積数値は現在の登記簿上の数値です。

権利部

下半分の段落を権利部と言います。
これは所有権等の権利の状態を記録したものです。いつ、誰が土地を買った・借りたかが分かります。

現在の土地の所有者は誰か

現在の土地の所有者が誰であるかは極めて重要です。これが現状と一致していなければなりません。
もし相続等で所有権移転が発生し、それを登記しないままでいる場合、まずは登記を先にしましょう。
なお、令和6年4月からは相続登記が義務化され、懈怠した場合は過料が科されます。
また、所有者の現住所が登記簿記載の住所と異なっている場合、本人確認書類として免許証やマイナンバーカードの写しを求められることがあります。

土地に使用収益権の設定があるか

次に重要なことが、土地に使用収益権が設定されているかどうかです。
使用収益権とは、その土地を直接支配し利益を得る権利です。すなわち、貸借権や使用貸借権、地上権等が挙げられます。
これらの権利が設定されている場合は、農振除外や農地転用をする際に使用収益権者の同意書が必要です。
なお、抵当権や根抵当権は使用収益権には当たらないので同意書は必要ありません。(もっとも、農地に抵当権や根抵当権を設定する人はほぼいませんが…)
また、使用収益権にあたる権利でも、仮登記である場合は同意書は不要です。

不動産登記簿の取得方法

オンラインで取得する

オンラインの登記情報提供サービスで取得することができます。全国どこの土地であろうと取得が可能です。
しかし、オンライン取得された登記簿を申請書類として認めない自治体も多いです。
とはいえ、そもそも農振除外や農地転用が可能な地域かを判定するための資料や役所との調整資料としての目的であれば十分に役に立ちます。
自分は作業を効率化させるための投資だと思って、依頼を受けた際は最初に迷わずオンラインで登記簿を取得します。
なお、手数料も1枚あたり362円と非常に安価です。

また、オンラインで公図や登記を取得した場合、必ずデータをダウンロードして保管しておきましょう。
取得した後にダウンロードを忘れて放置してしまうと、一定期間経過後はダウンロードができなくなってしまい手数料の払い損になります。

法務局で直接取得する

法務局でも当然、同じ物を取得することはできます。
法務局の窓口で「登記簿が欲しい」と言えば案内してくれます。
実際の申請手続きではこちらの書類が必須な場合が多いです。

最後に

今回は不動産登記簿の概要と取得方法について解説しました。
今回の内容は、農地転用等に限らず不動産関係のあらゆる許認可で共通する内容です。よく覚えておきましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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