貸借対照表(財務諸表)の書き方【建設業】

貸借対照表は、財務諸表を構成する書類の1つです。内容が複雑なため、ポイントを押さえて解説します。
今回は前回に引き続き、架空の会社の財務諸表を一から作成するのは困難なので、手引書に記載されている財務諸表例を解説する形式で記事を進めます。

この記事は「架空の建設業者を想定して、実際にロールプレイ形式で申請書類を作成する」という企画の第13回目です。

なお、前提条件は第1回から変化ありません。
まずは、以下の第1回の前提条件を確認してからこの記事を読み進めることを推奨します。
①:【建設業】申請書書類作成演習:①許可申請書

また、これまでのアーカイブは以下のリンクから参照できます。
閲覧書類編:閲覧書類【建設業】 アーカイブ
確認書類編:確認書類【建設業】 アーカイブ

1 貸借対照表の概要

前提

貸借対照表とは、会社の資産・負債・資本(純資産)をまとめた表です。
資産=負債+資本(純資産)です。イコールで繋がっているので、左右の数値は必ず均衡します。
分かりやすく言えば、資産は所有しているカネとモノです。
負債は借金です。当然、いつかは返済する義務があります。
資本(純資産)は資産を得るために投資した自分のカネと会社経営で儲けたカネです。自分のモノなので誰にも返す義務は発生しません。
つまり、貸借対照表を見れば、その会社が現在保有しているカネとモノがどのような手段で入手されたのかが分かるのです。
また、ここでいう負債は必ずしも悪いものではありません。
なぜなら、会社を大きくして利益を拡大するためにはモノが必要だからです。
例えば、1台1000人日の機械を買うために500万円の借金をしたとしても、その結果として500万円以上の利益を得られるなら最終的には利益が上回ります。いつかは負債を上回る収益を出せることを見込めるならば、負債は悪ではありません。

資産の種類

流動資産

概ね1年以内に現金化することが出来る資産を流動資産といいます。
受取手形や有価証券(株券など)、預金などが流動資産に含まれます。
要は、使おうと思えばすぐに使えるカネが流動資産です。

固定資産

すぐに売るのではなく長期使用または長期保有することを前提とする資産を固定資産といいます。
要は、会社の売上を伸ばすために必要なモノが固定資産です。
固定資産には有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産があります。

有形固定資産

建物、土地、建設機械、備品などがこれに当たります。
要は、文字通り実体のあるモノです。

無形固定資産

特許権や借地権などの権利がこれに当たります。
要は、文字通り実体のないモノです。

投資その他の資産

有形固定資産と無形固定資産のいずれにも該当しない固定資産がこれに当たります。
投資有価証券や長期貸付金などが具体例です。
これらは短期的な売買目的ではないではないため、必然的に長期保有型の資産になります。

繰延資産

これは、支出した費用のうち、支出したサービスや品物の効果が1年以上に及ぶものです。
開業費や株式交付費がこれに当たります。
○○費となっているため、本来は費用なので資産とすべきではないのですが、例外的に資産に勘定することが認められています。
なお、当然ですが現金化することはできないため、純粋な資産ではないことを頭に入れておきましょう。

負債の種類

流動負債

これは、概ね1年以内に返済しなければならないカネです。
支払手形や短期借入金がこれに当たります。

固定資産

これは、すぐには返済しなくていいカネです。
社債や長期借入金がこれに当たります。

資本(純資産)の種類

株主資本

これは、誰にも返済しなくていい純然たる自社のカネです。
資本金や自己株式がこれに当たります。

評価・換算差額等

これは、保有している有価証券や土地の時価評価の差額です。
株式や土地の値段は流動的なので、得をすることもあれば損をすることもあります。
なので、これらは確実に資本を増加させる要因になるとは限りません。

新株予約権

これは、他社の発行する新規株式を購入する権利です。
株式を購入した場合は有価証券という資産を増やすことが出来ます。

実際のフォーマット

実際のフォーマットは以下の通りです。

貸借対照表

貸借対照表

2 作成要領

全ての項目を解説すると膨大な量になってしまうので、ポイントを絞って解説します。
基本的には決算書の数値を転記するだけでほとんどの項目を作成できますが、以下に解説する項目には独自のルールがあるため、その部分を意識して読み進めてください。

完成工事未収入金

これは日商簿記でいうところの売掛金であり、流動資産の1つです。
建設業に関わる売掛金のみ完成工事未収入金と呼称します。
なので、決算書の「売掛金」を建設業部門と兼業部門に振り分ける作業が必要です。

未成工事支出金

これは日商簿記でいうところの仕掛品であり、流動資産の1つです。
建設業に関わる売掛金のみ未成工事支出金と呼称します。
なので、決算書の「仕掛金」を建設業部門と兼業部門に振り分ける作業が必要です。

建物・構築物

これは建物と建物の附属設備を足したものであり、固定資産の1つです。
附属設備が含まれるという点に注意しましょう。

機械・運搬具

これは機械装置と車両運搬具を足したものであり、固定資産の1つです。
車両運搬具が含まれるという点に注意しましょう。

工事未払金

これは日商簿記でいうところの買掛金であり、流動負債の1つです。
建設業に関わる買掛金のみ工事未払金と呼称します。
なので、決算書の「買掛金」を建設業部門と兼業部門に振り分ける作業が必要です。

未払金

これは決算書の未払金と未払消費税等の合計値です。

未成工事受入金

これは日商簿記でいうところの前受金であり、流動負債の1つです。
建設業に関わる買掛金のみ未成工事受入金と呼称します。
なので、決算書の「前受金」を建設業部門と兼業部門に振り分ける作業が必要です。

最後に

貸借対照表の目的は、当期の会社の財政状況を明らかにすることです。
すなわち、建設業の許可要件の1つである財産的基礎を証明するために不可欠です。
これで純資産合計が許可要件を満たさないことが判明した場合は、いかなる場合も許可は取得できません。
「今から銀行でカネ借りてくるから、許可出して!」といくらお願いしてもダメなのです。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回は、株主資本等変動計算書を解説する予定です。


この記事が建設業許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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