相続土地国庫帰属制度の申請方法

相続土地国庫帰属制度は、相続等によって取得した土地を国庫に帰属させる制度です。
申請するためには承認申請書を記載し、法務局に提出しなければいけません。
相続土地国庫帰属制度の申請方法は決して難しいものではありません。
しかし、行政手続に慣れていない方にとっては少し難しいと感じるかもしれません。
そこで、今回は相続土地国庫帰属の申請方法について解説します。

相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度の申請方法には2種類ある

相続土地国庫帰属制度の申請方法には以下の2種類があります。

  1. 単独申請の場合
  2. 共同申請の場合

まず、単独申請は相続人が一人の場合の申請方法です。
父の財産を一人っ子が全て相続したような場合を想定していただければ良いかと思います。

次に共同申請ですが、これは相続人が2人以上いる場合の申請方法です。
父の財産を2人兄弟が相続したような場合です。
法定相続分で相続した場合は、相続した土地は兄が1/2、弟が1/2で共有状態となります。
この状態のまま国庫帰属制度を申請する場合、兄弟が揃って申請人になります。

形態に合った申請方法を選択しましょう。

単独申請の承認申請書

記載項目

まずは、承認申請書の記載項目をざっくりと確認しましょう。

  1. ページ数
  2. 申請年月日
  3. 承認権者及び提出する法務局
  4. 承認申請者の氏名、住所
  5. 申請する土地の所在地、地番、地目、地積
  6. 申請する土地の所有権登記名義人または表題部所有者の氏名、住所
  7. 添付書類の一覧(チェックリストに☑を付ける)
  8. 審査手数料の金額
  9. 申請に関わる土地の状況
  10. その他(同意の確認、チェックリストに☑を付ける)
  11. 申請書の内容が相違ない旨の証文
  12. 申請者の住所、氏名、連絡先、実印
  13. 申請書作成代行者の氏名、住所、連絡先
  14. 別紙(チェックリストに☑を入れる)及び収入印紙貼付台紙

このように、行政手続きの申請書にしてはかなり簡単な作りになっています。
おな、実際のフォーマットを以下に添付します。

書き方

ページ数

各ページの上部中央の余白に「1/5」といったように記載します。
「1/5」というのは全5ページ中の第1ページという意味です。

承認権者および提出する法務局

広島法務局に提出する場合は、

広島法務局長 殿
(提出先:広島法務局)

といった書き方になります。

申請者の氏名、住所

住所については住民票に記載の通り、略さずに正しく記載しましょう。

申請する土地の所在地、地番、地目、地積

ここは不動産登記簿に記載の通りにそのまま転記して下さい。

申請する土地の所有権登記名義人または表題部所有者

通常は申請者と所有権登記名義人は一致します。
このため、ここは通常は「1に同じ」と記載します。

しかし、申請者と所有権登記名義人が別の事態もあり得ます。
それは相続後に相続登記をしないままである場合です。
この場合は所有権登記名義人は被相続人なので(厳密に言えば断言はできませんが…)申請者と異なります。
そのため、このケースでは不動産登記簿に記載された所有権登記名義人の氏名住所を転記します。

添付書類の一覧

ここは準備した添付書類に漏れがないか、チェックリストに☑を入れていくだけです。
なお、ここではその概要のみを解説します。
詳細な作成方法についてはこちらの記事にて解説しております。宜しければ御参照ください。
【関連記事】

相続土地国庫帰属制度の申請に必要な添付書類について解説

相続土地国庫帰属制度は、相続等によって取得した土地を国庫に帰属させる制度です。 申請するためには承認申請書を記載し、添付書類を添えて法務局に提出しなければいけま…

必須書類
  1. ☑承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  2. ☑承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  3. ☑承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
  4. ☑申請者の印鑑証明書(市区町村作成)
  5. ☑相続人が遺贈を受けたことを証する書面
  6. ☑土地の所有権登記名義人(or表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面
任意書面
  1. ☑固定資産評価証明書
  2. ☑承認申請土地の境界等に関する資料

なお、添付書類は別の記事で解説したいと思います。

審査手数料

手数料は土地1筆あたり14,000円です。
なお、手数料と負担金は異なります。
手数料は承認の可否に関わらず返却されません。

申請する土地の状況

ここは「別紙の通り」と記載します。
別紙については後に解説します。

その他

ここは法令上の各種の条件について承諾するか否かをチェックリストに☑を入れていくだけです。
なお、承諾の項目は以下の通りです。

  1. ☑私は、 法務局が、審査に当たって承認申請に係る土地の状況を確認する目的で、当該土地の固定資産課税台帳の情報(土地の所在・地番、現況地目及び現況地積(課税))を地方公共団体から取得することを承諾します。
  2. ☑私は、本承認申請に係る土地の所有権が国庫に帰属した場合、国庫帰属後に土地を管理する国の機関によって、私から国の機関への所有権移転の登記嘱託が行われることを承諾します。
  3. ☑私は、東京法務局が、本承認申請に係る土地を有効活用する観点から寄附受付の可能性等を確認するため、関係する国の行政機関、地方公共団体や土地の有効活用に資する団体等に対し、本承認申請に係る情報(承認申請があった旨、承認申請に係る土地の所在・地番、承認申請者名、承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面・承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真・承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真)を提供することを承諾します。

申請書の内容が相違ない旨の証文

ここには以下の文書をそのまま転記して下さい。

本件申請の内容は真実に相違ありません。
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号。以下「法」という。)第2条第1項に基づき、上記のとおり、申請します。

申請者の住所、氏名、連絡先、実印

ここにも申請者の情報を記載します。
ただし、この欄には実印と連絡先(電話番号とメールアドレス)が必要なことに注意が必要です。

申請書作成代行者の氏名、住所、連絡先

ここには作成を代行した行政書士等の情報を以下のように記載します。
該当しない場合は何も記載しません。

承認申請書作成者
住 所 広島県広島市〇区○○
氏 名 △△行政書士事務所 行政書士 国庫 一郎
連絡先 ○○○-○○○○-○○○○
aaa-bbbb@moj.co.jp

別紙及び収入印紙貼付台紙

別紙

ここも以下のチェックリストに☑を入れていくだけです。
これは不許可要件に該当しないことを列挙したものです。
このため、全ての項目にチェックが入っていなければ申請は認められません。

確認項目
  1. ☑ 建物の存する土地ではありません。
  2. ☑ 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地ではありません
  3. ☑ 通路その他の他人による使用が予定される土地ではありません。
  4. ☑ 特定有害物質により汚染されている土地ではありません。
  5. ☑ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地ではありません。
  6. ☑ 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するものではありません。
  7. ☑ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地ではありません。
  8. ☑ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地ではありません。
  9. ☑ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地ではありません。
  10. ☑ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地ではありません。
  11. ☑ 【別荘地の場合】別荘地管理組合等から管理費用が請求されるなどのトラブルが発生する土地ではありません。
  12. ☑ 土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地ではありません。
  13. ☑ 鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地ではありません
  14. ☑ 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地ではありません。
  15. ☑ 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地ではありません。
申請する土地が森林の場合
  1. ☑ 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林ではありません。
  2. ☑ 立木を第三者に販売する契約を締結している土地ではありません。
  3. ☑ 森林組合等への森林経営委託契約等の管理や経営に関する委託契約を締結している土地、入会権・経営管理権が設定されている土地ではありません。
  4. ☑ 他人による使用が予定される林道、登山道が含まれる土地ではありません。
差し込み文章

最後に以下の文章を差し込みます。

私は、本承認申請に係る土地の状況について、上記のとおり、法第2条第3項に規定する申請できない土地及び同法第5条第1項に規定する帰属の承認ができない土地に該当しないことを確認しました。
申請者氏名 〇〇 太郎

収入印紙貼付台紙

ここには文字通り収入印紙を張り付けるだけです。
なお、収入印紙には割り印をしません。

共同申請の承認申請書

共同申請の場合でも基本的に単独申請の場合と記載事項はほぼ変わりません。
このため、単独申請との差異のみを抽出して解説します。

なお、実際の申請書のフォーマットを以下に添付します。

申請者の氏名、住所

必ず共有者全員が申請者とならなければなりません。
これは、民法上の共有物の変更に該当するため全員の同意が必要だからです。
また、最大の違いとしては、共有者に法人がいる場合は法人の名称、会社法人番号、所在地、代表者の役職と氏名が記載事項となります。
相続した土地なのに、法人との共有状態になり得るのか?と思わた方もいらっしゃるでしょう。
法人は自然人ではないので相続人にはなり得ません。
この制度を利用できるのは自然人だけのように解釈されがちです。

しかし、1つだけ法人が申請人になり得る場合があります。
それは、相続以外の原因により共有持分を取得した共有者が相続人と共同申請する場合です。
上の一文だけで理解できる人間はまずいないと思うので、少し掘り下げて解説します。

まず、Y氏が所有する土地を、X氏(自然人)と法人Zが買い取ったとします。
この時のX氏と法人Zの共有持分はそれぞれ1/2としましょう。
次に、X氏が死亡し、子のA氏がX氏の保有する持分を相続しました。
この時の共有状態はA氏が持分1/2、法人Zが持分1/2です。
さて、この場合は順当にいえば相続で土地を取得したA氏しか当該制度を利用できない筈です。
しかし、それではあまりにも融通性を欠いてしまいます。
そのため、A氏と法人Zが共同で同時申請する場合のみ、法人Zも当該制度の対象者とみなされます。

申請する土地の所有権登記名義人または表題部所有者

ここも上記の通り所有権を有する者が複数いればその分だけ記載します。

その他

ここ部分の第4項に承認後の納入告知書を代表して受領する申請人の氏名を記載します。
なお、承認後送付される納入告知書は1枚のみです。
必ず代表受領者となる者を記載してください。

申請者の住所、氏名、連絡先、実印

ここには全申請人の情報を記載します。
また、申請人の中に法人がいる場合、法人の会社法人番号及び登記所に提出している法人印が必要となります。

注意すべきこと

この承認申請の標準的処理期間は約8カ月です。
申請してから承認が下りるまで気長に待たなければなりません。

最後に

今回は相続土地国庫帰属制度の申請方法について解説しました。
相続土地国庫帰属制度の申請は他の許認可に比べる難易度は低いものであると言えます。
しかし、確認しなければならないことや収集資料が多岐に亘るため、難しいと感じた場合は行政書士等の専門家に相談しましょう。
また、法務局のHPにもかなり詳しい情報が記載されていますので確認することを推奨します。
「相続土地国庫帰属制度」のページ一覧:東京法務局 (moj.go.jp)

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が相続土地国庫帰属制度の申請方法について学びたいと考えていた方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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